祖母は健康オタク

私の祖母は健康オタクだった。
ワイドショーで「この食品が高血圧予防になる」「免疫をつけるにはこの食品」などと聞くと、それからしばらくはその食品を使って料理をしていたし、青汁や飲むお酢のストックは必ずあった。

健康器具も大好きで、体に電気を通すための機械、足を乗せて足裏のツボに合わせて電気を流す機械などがあり、もちろんマッサージチェアもあった。
おそらくとても高価なマッサージチェアだったと思う。
とても快適で、気持が良く、私もよく使わせてもらっていた。
昔、ぶらさがるのが健康に良いと言われたことがあったが、その時にはわざわざ大工さんに来てもらい、一室の天井にぶらさがるための棒を設置した。
私が記憶のある時には、それは洗濯物を干すためのものになってしまっていたが。
そのように健康のために気を遣い、お金も使っていた祖母は、80歳を過ぎてもとても若々しく、90歳手前まで長生きした。
そんな祖母のことを思い出す時、私は祖母が作ってくれた煮物のことを思い出す。
やはり健康に良いからと言って購入してきたゴーヤで、祖母はなんと煮物を作ったのだ。
苦いゴーヤを私が食べられず、代わりに一緒に煮てあった人参を食べようとしたが、ゴーヤの苦みが煮汁に溶け出し、その苦みが人参にもよく浸みていた。
とても食べられたものではなかった。
人参の苦さにびっくりし、大量のお茶で流しこんだことをよく覚えている。
そんな私を見て、祖母も苦笑していた。
あの思い出が私にとって、健康オタクの祖母を代表する一番の思い出で、おかしさとともに脳裏に当時の光景が蘇るのである。

お婆ちゃんの大の猫好きと懐かしい思い出

私が物心ついた時には、既に家には色々な動物がいました。
牛や豚、ニワトリやヤギ。
ウサギもたくさんいましたし、とにかく動物の声でにぎやかだったことだけは覚えています。
そうそう、どこからかやってくる猫たちもいました。
この猫たちは、我が家で飼っているペットではありません。
でも、食事時になるとどこからともなくやってきてご飯を食べてまた帰って行くのです。
食事の世話は、お婆ちゃんの仕事でした。
仕事と言うよりも、趣味と言った方が良いかもしれません。
何匹も何匹もやってくるので、とても面白かったような気がします。
ところが、何時の頃からか我が家に全く猫が来なくなりました。
何か理由があって猫たちが来なくなったのか、それとも来ないように何か細工をしたのか分かりませんが、気が付けばすっかり見ることがなくなりました。
いつかその理由を訊いてみたいと思っていたのですが、そのチャンスを掴めずに今日まで来てします。
私の祖母の猫好きは本当にすごくて、もしかしたら孫である私たちよりも可愛がっていたかもしれません。
今でも、猫を見つけると餌をやったり話しかけたりしています。
そんな祖母ですから、とても不思議なのです。
昔とても賢い猫がいて、大切に育てていたのにある日いなくなってしまって、酷く落ち込んだことがあったそうです。
子どもの頃、その猫の武勇伝も何度も聞かされました。
ペットとの別れは、恐らくとても辛いものなのでしょう。
家族の一員であることはもちろん、友人であり同士なのかもしれません。