車よりも価値のある女性になれた日

私がどうして車に興味がないのか、それには実は理由があります。
と言うよりも、車が好きな男性はたくさんいらっしゃると思いますが、私はそういう方でない男性と付き合いたいと思っていました。

20代前半、私が好きになった人は車が大好きな人でした。
遠距離恋愛と言って良いのかどうか分かりませんが、会えるのは一年に一回か二回だけ。
そんな僅かな時間を、どれだけ楽しみにして暮らしていたか分かりません。
忙しい職業のようで、家には寝に帰っているだけだと言う彼。
都会の人は大変だなと思ったものです。
だから、顔を見たくても、声が聞きたくてもそれを相手にいう事はあまりありませんでした。
会う約束の日、新幹線に乗る時間になって電話が。
愛車の調子が悪く、工場に行かなければならないと言うのです。
そうか、彼にとって私よりも車の方が大切な存在なのだなと、酷くショックを受けました。
この時から、私は二度と車好きとは付き合わないと決めたのです。
どんなに古くてボロの車でも構いません。
安い車種であっても何でも全く構わないのです。
ただ、私よりも車を大切にするような人だけは嫌だなと思いました。
結局それから自然消滅。
しかし、度々忘れた頃に電話がかかってきました。
変わりたいという気持ちが強かった私は、それから数年の間に転職して体重も15キロ落とし、別人になりました。
彼を見返したいといった気持ちは不思議とありません。
自分が悪いからこんな風にされるのだと自らを反省したのです。
私のような人間でも、痩せるとけっこういい感じになることを知りました。
車よりも勝っていると思える自分になりました。

車のハンドルを握るようになって

車の運転が得意でもなければ好きでもない私も、車が無くてはならない土地に引越してきたことで、渋々ハンドルを握るようになりました。
ここでは、買い物も通院も簡単ではないのです。

中古で購入した軽自動車は、まさに私の相棒であり親友でもあります。
交通の便の良い場所であれば、上手に利用してどこにでも行けますが、そのような所ばかりではないとここに来て知りました。

どこに行くにも、自分の車を使って自分で動かさなければならないのです。
10年前に取得した運転免許証が、役に立つ日が来るとは思いませんでした。

貯金を使って自動車学校に通い、もう一度運転の練習を行いました。
私にとって決して安い料金ではありませんでしたが、ここはケチるところではありません。
自分で納得できるまで頑張りました。

私の軽自動車は、一緒にずっと走って来た大切な親友です。
車の中で、愚痴を言ったり泣いたこともありましたし、歌いながら笑いながら時間を過ごしたこともあります。
なんだかんだ色々ありましたが、一つだけ分かることは何でもやってみる価値はあると言うことです。
何にでも言えることですが、最初から諦めたり嫌がったりしていたら、きっと損をしてしまうような気がします。
私にとって、車の運転もそうでした。

安全第一で、丁寧な運転をして行きたいと思っています。
そして、思い出の詰まったこの車を、できるだけ長く利用して行けたら良いなと思っています。
車の運転をするようになって、確かに視野が広くなっている私がいます。